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#イノベーションコミュニティ
06
子どもたちの視点が社会を変える。テックの街・品川で交差する『みんなのみらい』。

子どもたちの視点が社会を変える。
テックの街・品川で交差する
『みんなのみらい』。

内山 洋人
PROFILE
内山 洋人
全国選抜小学生プログラミング大会
運営事務局
(株式会社共同通信社内)

テクノロジーを「誰かのために」使う。
進化する子どもたちの視点

全国の地元新聞社と共同通信社で構成される全国新聞社事業協議会が主催する『全国選抜小学生プログラミング大会』。品川インターシティを舞台に、全国から勝ち抜いた小学生たちが自らのアイデアと技術を競い合う本大会は、単なる技術コンテストにとどまらない『社会課題解決の登竜門』として大きな注目を集めています。2022年から運営に携わる内山さんは、大会を重ねるごとに子どもたちのスキルと意識が劇的に進化していると語ります。

内山:
「『みんなのみらい』というテーマのもと、全国各地の予選を勝ち抜いた小学生たちが東京・品川のステージに集結する全国選抜小学生プログラミング大会は、2020年度の小学校でのプログラミング教育必修化を機にスタートし、2026年度で7回目を迎えます。初期の大会では、プログラミングツールを動かすこと自体を楽しんだり、高度な視覚効果に驚かされたりする作品が多く見られました。しかし近年は、子どもたちにとってプログラミングが『課題解決のための手段』へと進化しています。技術を自己目的化するのではなく、『誰かの課題を解決したい』という方向性へと向いているのを感じます。家族や友人、あるいは社会的な弱者が直面している困りごとに寄り添い、それを解決するためにどの技術をどう組み合わせればいいかという、バックキャスト型の思考ができる子どもたちが年々増えてきている印象です」

プログラミングスキルの面でも、かつては教育用ビジュアルプログラミング言語であるScratch(スクラッチ)を使った基礎的な作品が主流でしたが、現在ではPythonやJavaScriptを自ら実装する小学生も少なくありません。さらに、生成AIの活用も一般化しつつあります。

内山:
「生成AIについても、単にAIに丸投げしてアプリを作らせるような使い方はしていません。作品を有意義なものにするために、翻訳や画像認識、音声対話などのAI技術やAPIを適切に組み込んでいます。大人たちが生成AIの活用方法や規約について議論している間に、子どもたちは純粋な視点で積極的にトライし、技術トレンドを驚異的なスピードで吸収しています」

内山 洋人

審査員を驚嘆させるアイデアと、
大人顔負けのプレゼン力

子どもたちの純粋な視点は、大人たちが諦めて見過ごしてしまうような社会課題を鋭く捉えます。2025年度の大会でグランプリに輝いた作品『KIGO(キゴ)-ろう者と健常者の間の心理的な壁を越える装置-』も、その一つです。

内山:
「この作品が評価された最大のポイントは、単なる手話翻訳機にとどまらず、ろう者と健常者の間に厳然と存在する『話しかけづらい』という心理的なハードルを越えることに着眼した点です。審査員の方々も、その高い共感性とプロダクトとしての完成度に強いインパクトを受けていました。ハードウェアとソフトウェアを高いレベルで融合させ、実際に目の前の人を笑顔にするコミュニケーションのデザインがなされており、『プログラミングは世界を優しく変えられる』という可能性を体現していました」

ほかにも、本大会では毎年、大人の想像を超える作品が誕生しています。過去には、図書館のおすすめ本をAIが提示する仕組みを開発し、実際に地元の図書館へ導入されて地域貢献を果たした事例や、発話が困難な状況でも、飲食店でスタッフに要望を伝えるための補助ツールを開発した事例もありました。

内山:
「大人になると『仕方のないこと』と諦めてしまう日常の不便や違和感に対して、子どもたちは『なぜそうなっているの?』とピュアな視点で立ち止まります。この驚異的な観察眼と共感力こそが、大人顔負けのアイデアが生まれる原動力ではないかと感じます。また、大会の大きな特徴としてプレゼンテーションを重視している点が挙げられます。47組のファイナリストが1日かけて登壇するのですが、地元の特産品を持参したり、ときには被り物をしたりと(笑)、いかに印象を残すかを工夫しており、非常に高いプレゼン能力を持っています。社会課題を解決する優しいテクノロジーの発表に、会場では涙を流して感動される方もいらっしゃいました」

内山 洋人

テックの街「品川」で生まれる、
世代を超えたシナジー

全国大会の舞台として品川インターシティが選ばれている背景には、全国からの交通アクセスの良さに加え、品川という街が持つ独自のテック文化があります。

内山:
「品川は、日本有数のグローバルIT企業や挑戦的なスタートアップ、最先端のビジネスパーソンが集まるイノベーションの最前線です。熱気あふれるこの街で大会を開催することには極めて大きな意義があります。例えば、大会前日に品川にある『未来ロボスクエア』などの施設を見学してから会場入りする親子もいらっしゃいました。地元とは違った、リアルな社会や経済が動いている街の空気を肌で感じることで、自らのプログラミングが未来の社会と地続きであることを実感できるのではないかと思います」

内山さんは、この品川という場所で、小学生たちと先進企業の間に新たな化学反応が生まれることを期待していると話します。

内山:
「大人が子どもに教えるという上下関係ではなく、互いのバイアスを破壊し合うような関係性が理想的だと思います。品川のイノベーターたちは、市場規模やコストといった大人の制約の中で戦っていますが、子どもたちはそうした制約を飛び越えた純粋な理想と自由な発想を持っています。先進企業の皆様が子どもたちのピュアなアイデアにハッとさせられる刺激を受け、逆に子どもたちはプロの技術力やビジネス視点に触れて解像度を上げていく──。そんなふうに将来、品川発のスタートアップに当時の出場者がジョインするような循環が生まれたら素晴らしいですね」

内山 洋人

『1番を決めて終わり』にしない。
次世代のリーダーに寄せる期待

2026年度で7回目を迎える本大会ですが、運営事務局としては大会の価値をさらに拡張していく展望を描いています。

内山:
「単に1番を決めて終わる大会にはしたくありません。学校の教育現場や地域の情報教育コミュニティと深く連携し、子どもたちが日常的に創造性を発揮できる環境づくりに挑戦したいと考えています。現在、全国大会に出場できなかった子どもたちにも還元できるよう、地域でのプログラミングワークショップを開催するといったトライアルも始めています。大会を一過性のイベントにせず、プログラミング教育の裾野を広げる活動にも注力していきたいです」

大会を通じて大きな成功体験を積んだ子どもたちに、将来どのような大人になってほしいか。内山さんは次のように語ります。

内山:
「子どもたちの将来の夢は、プログラマーだけでなく、宇宙飛行士、医療、芸術、農業、経営など多岐にわたります。自ら課題を見つけ、アイデアを形にし、誰かに届けて価値を認めてもらったという成功体験は、どんな職業を選んだとしても必ず活きます。世界は変えられないものではなく、自分の手でより良くアップデートできると信じ、様々な課題に対して当事者意識を持って行動できるリーダーが育ってくれたらうれしいですね」

最後に、SHINAGAWA INNOVATION TIMESの読者であるビジネスパーソンやテック企業に向けた熱いメッセージをいただきました。

内山:
「毎年子どもたちが生み出すプロダクトの熱量とポテンシャルは、大人の想像を遥かに超えています。彼らの挑戦を後押しすることは、ビジネスの未来、社会の未来を豊かにすることにもつながります。中高生になってからだけでなく、小学生という早い段階からの支援にぜひご協力いただき、彼らの瑞々しい感性を面白がりながら、時にはメンターとして、時には最初のファンとして伴走していただければ幸いです」